酒蔵さんを見学しようと思い立ったとき、どんなことに注意すれば良いかがわからないという方は多いと思いますので、注意点やポイントを日本酒講師の並里がまとめたいと思います。
酒蔵見学とは?まず知っておきたい基本
酒蔵さんは日本酒を製造販売業務が中心なので、見学を受け入れていないところも多くあります。
また、受け入れてくださる酒蔵さんでも見学料などで収益を上げる仕組みにはなっていないことの方が多いです。
「お酒造りを知ってほしい」という気持ちや単純なご厚意で受け入れてくださっていることが殆どなので、感謝の気持ちを持ってご訪問いただくのが良いと思います。
全国の酒蔵見学の検索システムを日本酒造組合中央会が公開していますが、最新情報かどうかはわかりませんので、見学受け入れがあるかどうかは蔵のホームページなどで確認するのが一番です。
必ず予約をする(突然の訪問は避ける)
前述のように酒蔵さんは基本的に製造販売業務が主ですから、見学専門のスタッフがいないことが多いです。予約があればスタッフの調整をしてくださると思いますが、突然の訪問では対応が出来ないことも多いと思います。
予約は公式ホームページから連絡をするパターンが多いと思います。
その際、もし業界関係者やSAKE DIPLOMAなどの資格保持者である場合には伝えておくと良いかもしれません。蔵によっては見学コースや説明内容がより深いものに変わる場合があります。
ちなみに、酒蔵さんによっては小売店や飲食店が併設されていることもあります。
その場合はそちらは事前の予約をしなくても入れると思います。
予約時にアクセス情報は確認しておく
水の良いところに蔵を構えるパターンが多いので、交通の便があまり良くないことも多いです。
電車じゃなくて車がいいな、でも車で行くと運転手は試飲が出来ないし…などの問題点にぶつかる場合もありますから、その辺りも事前に確認しておくことをお勧めします。
見学時期を検討する
酒蔵のシーズンは大きく分けて「オンシーズン(酒造期)」と「オフシーズン(酒造期以外)」に分かれます。
日本酒は低温で空気が綺麗な冬の時期に仕込む「寒造り」が主流のため、秋冬が酒造期である場合が殆どです。
ただ、大きな蔵では蔵全体に空調を入れることで年中寒造りが出来る「四季醸造」や、空調を入れるけど真夏だけは製造を休んでメンテナンス作業に専念する「三季醸造」を採用している蔵もあります。
オンシーズン(酒造期)の見学
やはりお酒を造っているところを見たいという方が多いと思いますが、造りのシーズンは見学をお断りするという蔵も多くあります。
造りの時期でも見学OKという酒蔵さんもありますが、それでも1月~2月あたりは出来れば避けて欲しいと考える蔵は結構多いんじゃないかと思います。
というのも、この時期はコンテストに出品するレベルの最高峰の「大吟醸」を造ったりしますので、もしそうであれば蔵人もみんな失敗できない緊張感で張り詰めていたりします。
そのため、見学に割く余裕がなかったりするのです。
オフシーズンの見学
では、オフシーズンの蔵見学は楽しくないかというと、決してそんなことはありません。
オフシーズンの酒蔵さんは酒造期に比べてゆったりとした空気感で見学できることが多いです。
また、例えば酒造期は「麹室(こうじむろ)」だけは見れないけどオフシーズンは「麹室」も見ていいなど、見学できる場所に違がある場合もあります。
私は受講生の方と一緒に学びに行くことも多いので、その場合はゆっくりお話を聞けるオフシーズンは案外良かったりします。
酒蔵見学の服装
蔵の中では使い捨ての不織布白衣と帽子、長靴などを用意している蔵もありますので、そうであれば行くときの服装は大きな問題ではないかもしれませんが、それでも下記の点は注意が必要です。
【服について】
□清潔であること
□動きやすくどこかに引っ掛からないこと
□寒くないこと
【靴について】
□脱ぎ履きしやすいこと
□階段やハシゴなどでも動きやすいこと
□汚れても良いものであること
【その他】
□香水や香料の強い整髪剤を避けること
□落としやすいアクセサリーを避けること

画像:獺祭さん蔵見学の格好
酒の発酵に影響する危険がある行動

□納豆を食べていく 危険度★★★
納豆菌は麹菌と増殖条件が似ていたりして厄介です。万が一納豆菌が増殖すると出来上がった麹が粘るらしいです。これは「粘り麹」と呼ばれ、当然失敗です。
多少の混入なら抑えることも出来るとは思いますが、万が一増殖した場合は麹室を完全に殺菌するのが難しく、大変なことになる可能性があります。
納豆菌を持ち込まないよう少なくとも前日・当日は食べないようにするのが良いと思います。
(私は納豆の味は好きですが、これが頭にあるため普段からなんとなく避けちゃいがちです。)
□みかんを食べていく 危険度★
これはあんまり言われませんが念のため。
みかんは皮をむくときに爪を立てがちです。そうするとみかんの表面にいた「野生酵母」が爪の間に入り込み、これが何かの拍子に付着すれば影響を与える可能性もゼロではないです。
通常の酒造りではこうした「野生酵母」の増殖を抑えるする仕組みがあるので、大きな問題は起こらないはずですが、もし麹作業などを体験するのであれば一応気にした方が無難かもしれません。
□強い香りの食べ物を食べていかない 危険度★
これは発酵に影響というわけではありませんが、前述の香水と同じような理由で避けるのがよいです。
写真撮影のルール
撮影しても良いものわるいものは蔵見学が始まる前に確認しておきましょう。
「とにかく何でもOK!」という蔵もありますが「あ、さすがに発酵経過の記録はちょっと…」とか「普段は見学NGにしているので、撮ってもいいけどSNSには上げないで下さい。」など色々ありますので、そのあたりはお気をつけ下さい。
また、時間が経ってからSNS投稿する可能性がある場合は、投稿していいものの記憶があいまいになるかもしれませんから、メモなどで分かるようにしておくと良いかもしれません。
SNSを盛り上げたい蔵の場合は、メインで使っているハッシュタグなどを聞いて、投稿の時に付けたりするのも良いですね。
⚠この場面は特に注意⚠

画像:天領盃酒造さん
タンクを覗きこんで写真を撮る場合も、絶対にカメラやスマホを落とさないように注意してください。
写真のタンクは転落が内容に鉄格子のようになっていますが、このような転落防止策はない方が多いくらいかと思います。
特に発酵中のタンクは二酸化炭素が充満していますので、万が一転落した場合には即意識を失い、這い上がるための行動も取ることが出来ず命を落とす危険もあります。
あまり多くはありませんが、部屋内・タンク内の二酸化炭素濃度によっては覗き込んだ瞬間に意識を失う可能性もゼロではありません。
ハシゴを使って覗き込む場合はその際に転落して頭を打ってしまうこともあるかもしれませんので、一定の緊張感は保っていただければと思います。
蔵人への質問の仕方
昔は酒造りに関しては門外不出!という感じだったかもしれませんが、今はどんな質問でも丁寧に答えてくれる蔵が案外多いです。
(当然ですが答えたくなさそうだったら深追いしないようにしましょう)
「仕込み水の加工」や「活性炭ろ過」などはあまり話したがらない酒蔵もあるかもしれません。
試飲について
あまりに当然ですが、飲酒運転や未成年飲酒などを絶対にしないでください。
提供した側の酒蔵さんにも多大なご迷惑がかかる場合があります。
また、酒蔵さん限定のお酒やしぼりたてのお酒など、飲みたいお酒が沢山あると思いますが、くれぐれも飲みすぎには注意してください。
口に含んだお酒を飲みこまずに吐き出すための器が用意されている場合もありますので、そうした器を活用しても大丈夫です。
酒蔵の方に「好みじゃないから吐き出している」と思われるのではと心配するかもしれませんが、その点は安心してください。プロのテイスティングも基本的には酔わないためにそうした器を使用しますので、酒蔵の方もそうした事情はわかっています。
酔いつぶれたりするよりはその方が数段良いです。

飲みたいものが沢山並んでいたりすると思いますが、くれぐれも飲みすぎ注意です💦
画像:来福酒造さん
酒蔵での買い物のマナー
酒蔵さんの多くは蔵でお酒や食品を買えるようになっています。
見学単体では利益を出していない設計の蔵が殆どですので、是非ここで売上に貢献していただければと思います。
酒蔵限定販売のお酒や地域内で親しまれているようなお酒をお土産にしても良いと思います。
そして機会があれば周りのお酒好きの方と一緒に飲みつつ、酒蔵さんのストーリーを語って頂ければと思います。
酒蔵見学をもっと楽しむコツ
ツアーか個人か?
ツアーなどの企画に参加するより、個人で直接蔵に打診した方が安上がりでマイペースに見学が出来て良いという方もいらっしゃるので、ここは好みです。
(飲食店でお酒を飲むより酒販店で買って家で飲む方が安上がりというお話にも近いかもしれませんね。)
恐らく、酒蔵さん側はどちらかというと適度な人数まとまっての訪問が嬉しいのではないかと思います。
誰と行くかは結構重要
日本酒に興味があるお友達と行くのもすごく楽しいですし、日本酒に詳しい人と一緒に行くと、自分だけでは見えなかった視点が見えたり、蔵人さんとの会話がより深いものになったりします。
前に一緒に見学に行った方と他の蔵に行くのも、共通した蔵の思い出がある分お話が通じやすくて楽しいですね。
事前の下調べもある程度しておく
あえて下調べをせずに当日のサプライズを楽しむやり方もありますが、私のオススメは少なくともホームページをある程度見ておくことです。
銘柄の名前や酒造りの特色などの事前の予習があると、蔵見学のときの理解度が全然違うのです。
私の蔵見学では、情報をまとめた資料をお配りしたり、場合によっては事前に特別講座を行ってから、後日蔵見学というコースもあります。
ひとこと
蔵見学に行くことで、今まで飲んでいたお酒でもより一層美味しく感じられ、より一層親しみが持てるようになります。
場合によっては「推し蔵」として応援する位のファンになってしまうかもしれません。
皆さんが楽しい蔵見学体験の時間を過ごせますように😉✨



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