2024年銀座クラスのSeiryuさんが合格体験記を書いてくださいました!
参考文献までご紹介の上で非常に詳細に書いていただいていますので、これから日本酒を勉強したいという方には非常にためになる体験記になっていると思います✨
自己紹介
大人になると好きなお酒の銘柄がいくつかできてくるものですが、どうして自分はこの銘柄を好きなのだろう、どうしたらあの銘柄の良さを他人に上手く伝えることができるだろうといった日本酒の「好き」を言語化することが最近の自分の課題でした。
また、日本酒の作り方には昔から興味があり、大学時代には日本酒の授業を取ったこともありましたので、その時の知識をいつか体系的にアップデートしたいと思っていました。(ちなみに授業の副読本は秋山裕一先生の『日本酒』(岩波新書,1994)でした。)
サケディプロマ受験の動機
日本酒に関する資格はいくつもあります。その中で私がサケディプロマを選んだのは、ワインのテイスティングの方法を取り入れた日本ソムリエ協会の資格だからという理由が大きいと言えます。
かつて『もやしもん』という漫画を読んだときに、ワインの利き酒は加点法である一方で、日本酒の利き酒は減点法なので日本酒の利き酒用語にはマイナスな言葉が多めであるという台詞が印象的でした(12巻p.104)。
最近になって、田崎真也先生が著書の中で、これまでの日本酒のテイスティング用語がネガティブで抽象的なものが多かったことを指摘されており、これからは日本酒のテイスティング用語も国際的なレベルへと言語化していかなければならないとおっしゃっているのを見つけました。そして、田崎先生が会長である日本ソムリエ協会が作ったサケディプロマという資格に関心を持ちました。(『No.1ソムリエが語る、新しい日本酒の味わい方』(SBI新書、2016年)p.16)
並里先生の授業
サケディプロマの受験を考えたときに、一番気になることはテイスティング対策だと思います。社会人にとっては限られた時間を有効に使うことが大切です。そこで思い切ってスクールに通うことを決めました。
スクールとして定評のあるアカデミー・デュ・ヴァンの中では授業の時間帯や立地を決め手に並里先生のクラスを選びました。そして、並里先生を選んだことは結果的に大正解でした。
並里先生はイケメン講師として有名な方ですが、決してイケメンを振りかざしているわけではないことはすぐに分かりました。何よりもお酒のプロとして真摯な姿勢で授業を進められ、また、授業の前後を含めて生徒のどんな質問にも丁寧に回答されている姿勢に好感を持ちました。
並里先生の授業は、独自のスライドに沿って進められます。単に教本を要約しただけでなく、重要な部分をナミサトポイントとして掘り下げて説明してくださいますので、より深い理解につながりました。私の場合は、予習に時間が取れなかったので、せめて授業は集中して聞こうと毎回最前列で並里先生の授業を受けました。そして、後日、並里先生のスライドを見返すことで復習し、更に詳しく知りたい部分については教本で確認するというのが、授業期間である3月から7月までの大まかな勉強のスタイルでした。
また、テイスティングは、初回の授業から毎回実施されます。初めは全く分かりませんでした。香りの特徴を選ぶにしても、メロンやバナナはともかく、スイカズラ、アカシア、菩提樹、セルフィーユ、果てには新緑や石灰(!)などそもそも香りを嗅いだこともないという選択肢が多数存在して驚きました。しかし、これこそが日本酒を客観的に評価するための共通言語なのであり、それぞれの選択肢は特定の香りや成分を表現するために仮借されたものだということが授業を通じてだんだんと分かってきました。並里先生は香りや味わいの取り方、そして選択肢の使い方などを論理的に教えてくださいますので、テイスティングの仕方についても徐々に理解できるようになっていきました。
1次試験について
1次試験はCBTによる選択問題です。こればかりは問題演習の数をこなすことが重要だと思います。アカデミー・デュ・ヴァンでは、練習問題が充実しています。3000問の問題が用意されており、10問単位で解くことができますので、忙しい社会人の方にも便利です。並里先生からは最低3000問、できれば6000問、9000問くらい解いておくと良いというアドバイスをいただきました。私の場合は本格的に問題演習に取り組んだのは7月に入ってからで、最終的に1次試験までに解いた問題数は5303問でした。
本番の試験時間は60分です。ある程度問題演習をこなしていれば30分ほどで一通り回答することができると思います。残りの時間はケアレスミスをしていないかのチェックに充てました。本番の正答率は体感として85%くらいだったと思います。
2次試験について
7月中に1次試験に合格すると、10月上旬の2次試験まではだいぶ時間が空いてしまうので、どうしても気持ちが緩んでしまいます。私にとって2次試験に向けて気持ちを切り替える良いきっかけとなったのは、並里先生のランチ会でした。
並里先生のランチ会は、卒業生も参加されることが特徴です。そこで出会った卒業生の方々から前年度の受験の様子や2次試験対策を具体的に聞くことで、再び気持ちを引き締めることができました。
日本酒対策
2次試験前の約1か月間は、自分のテイスティングの方法を確立していく時期でした。酒屋で日本酒のセットを購入し、日本酒の外観、香り、味わい等について並里先生の授業で覚えたテイスティングの共通言語を実際に当てはめていく練習をブラインドテイスティングで繰り返し行いました。テイスティングは回答に幅があることを学びましたので、細かく当てに行くよりも大枠を外さない回答を短時間でできるようにする訓練をしました。
焼酎対策
テイスティングでは焼酎についても出題されます。しかも、焼酎はストレートのものが出題されますが、飲食店で焼酎を飲む際にストレートで注文することはまずありませんので、焼酎については一からテイスティングの勉強をする必要がありました。ここで役に立ったのが並里先生セレクトの焼酎セット20種類です。このおかげで基本的な焼酎の風味についてはだいたい覚えることができました。
また、焼酎のテイスティングでは、アルコール度数についても問われます。これについては、標準的な25度のアルコール度数を自分がどのように感じるかを把握しておくことが本番で役に立ちました。
ところで、並里先生の授業では、テイスティングの際はイケメンを目の前にして口に含んだ酒を吐き出すことに抵抗があり、全て飲み込んでいました。ですが、本番ではテイスティングの後には論述試験も控えています。自宅でテイスティングの練習をする際には、口に含んだ酒を全て吐き出し、酔っぱらってしまわないようにすることを意識しました。細かいですがこれも私にとっては重要な練習だったと思います。
論述対策
近年は、200字の論述問題を20分で3問解くことが求められます。1問当たり6分くらいしかありませんので、事前の準備が重要となります。出題テーマに対して200字以内で何をどのように書くかについては、「キーワードをどれだけ散りばめられるかが大切」という並里先生のアドバイスが大変参考になりました。
私の場合は、教本を基に各テーマについて200字でまとめる作業をまず行いました。その際に意識したことは、薄く広く書くこと、そして本番で再現できるようシンプルに書くことです。その後は頭の中やPCなどで自分でまとめた答案を再現するという練習を行いました。
2次試験本番
昨年度までの合格体験記を拝見すると、東京の会場は意外に寒いというお話をよく目にしましたが、今年度は会場が変わったせいか、寒さは特に感じませんでした。
当日の会場のホテル内は受験生で溢れかえっており、ロビーなどでゆっくり勉強するというのはなかなか難しいと思いますので、会場に入るタイミングは直前でいいと思います。
テイスティングは、2024年も日本酒4アイテム、焼酎2アイテムの出題でした。吐器に吐き出す訓練をしてきたとはいえ、本番では若干の酔いと独特の緊張を覚えます。私の場合は繰り返しテイスティングをすると結果が異なり迷ってしまうことがあるので第一印象を信じることにしました。また、選択する個数を間違えてしまわないことを特に気を付けました。ちなみに、第一印象で分からなかった問題は結局間違えていました。
論述問題については、比較的オーソドックスな問題でしたので、これまでの練習で積み重ねてきたことを実践するのみでした。「花酒」が出題された際には、「あ、ナミサトポイントで出たやつだ!」と思い嬉しくなると同時に、並里先生はここまで見据えてスライドを作られていたのかと驚愕しました。
2次試験が終わった瞬間どっと疲れが出てしまいましたが、テイスティング、論述ともに持てる力を出し切れた感じがありました。
サケディプロマに合格して
冒頭のとおり、好きな日本酒のことをもっと言語化できるようになりたい、日本酒の知識をアップデートしたいという当初の目標はサケディプロマの勉強を通じて達成することができたと思います。
今後は、海外の友人たちに日本酒の素晴らしさを紹介できるようinternationalの資格に挑戦するか、並里クラスで出会った人たちは既にワインの資格をお持ちの方が多かったので、自分もワインの世界にも目を向けワインエキスパートの資格に挑戦するか、夢は広がるばかりです。
おすすめのお酒
最後に、私もおすすめのお酒を紹介させていただきます。仙台駅の中にある‘ファーメンテリア(fermenteria)’というお店が作っている生クラフトサケ「サケベイビー」です。
清酒ではなく「その他の醸造酒」に分類されるお酒ですが、米から作られるお酒の新たな可能性を感じることができます。
ファーメンテリアでは店内でお酒を醸造しており、透明な容器の中でお酒が発酵していく様子を間近で見ることができます。そして、その場で出来立てのお酒をいただくことができます。見た目の可愛らしさに反し、確固たる日本酒醸造技術を応用して作られたこのお酒は、口に含むと吟醸香とともにまるで甘口のシャンパンを飲んでいるような豊かな風味が口に広がっていきます。仙台駅にお立ち寄りの際にはぜひ飲んでみてください。
ナミサトより
充実した体験記をありがとうございます!
Seiryuさんはいつも教室の最前列真ん中で真剣に聴いてくださって、講義前後のご質問もよくしてくださったのが印象的です。
「好きを言語化する」というテーマを掲げて受験を決めて、勉強の中でもブレることなく目的の能力を修得されているのは流石ですね✨
最後の「サケベイビー」のおすすめコメントを読むと、すぐにでも仙台駅に行って飲みたくなってしまいますよね!
サケベイビーは本当にPOPな見た目ですが、有名な蔵元一族の情熱ある方がつくっている銘柄なので、私も是非皆様に飲んでいただきたいです✨
Seiryuさん、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
並里直哉

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